シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 
「――罠、だな」


櫂は目を細める。


「ここは氷皇の領域などではない。似て非なる…何の、領域だ?」


そう言うと。


「芹霞、遠坂。俺の結界から出るな。何か嫌な予感がする」


彼から放たれる緑色の結界の中に、あたし達はすっぽりと覆われる。


辺りは縹渺とした薄闇で。

所々に石像があり。


何度も同じ石像を見た気もすれば、違う気もして。

進んでいるのか、戻っているのかよく判らない錯覚に陥った。


1本道なのに、間違いなくあたし達は惑って流離っている。


「確実に進んでいるな。呼ばれ招かれるままに。

そして気づいているか? 地面が…緩やかに下降している。俺達は今、下へ下へと降りている」


全然判らなかったけれど、櫂が言うならそうなのだろう。


「行き止まり…?」


突如現われた黒い壁。


本当に突然現われた奇妙な障害。


「どうする? 戻るかい?」


由香ちゃんがそう言った時。



「ふふふふ…」


何処からか笑い声がした。



慌ててその声の主を捜せば…



「え!!?」



櫂の腕の中に居る、玲くんが笑っていた。


伏せられていた目が開き、

鳶色の瞳が…あたし達を見上げていた。


いつも通り、綺麗に綺麗に微笑んでいたんだ。
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