シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
――想定外だな。
蝶。
黄色の外套男。
その出現は、彼にとって確かに予想外のことだったかもしれないけれど。
――まさか…な
何か…知っているのではないか。
そんな感は拭えない。
「氷皇が命じる仕事は何か、連絡はきたのか?」
『何だか由香ちゃんが、その手紙に訳の判らないこと書いてあるっていうから…多分指示なんじゃないかな。とりあえずは由香ちゃん待ち。あ、メール来た。あと10分で着くって』
そうかと呟きながら、ふと腕時計を見れば、12時30分を過ぎていた。
「芹霞と煌はもう帰ってきているのか?」
『ん? もう家に着く時間かと思うけど。今どこら辺……え? えええ!?』
突如玲が慌てた声を出した。
「どうした!!?」
『櫂、芹霞と煌が…渋谷に向かった』
思わず舌打ちをした俺。
煌は、芹霞の"お願い"に勝てなかったか。
『昨日の今日で心配だな、人数は多い方がいいだろう。僕渋谷に行ってくる』
「……待て。家から渋谷までは20分はかかるだろう。それなら、俺の方が近い。しかも車だしな」
『……。でも万が一櫂まで榊のような目にあったら…』
「真っ昼間だし、遭遇する可能性は低い。ゼロとは言えないが。それに家には遠坂が来るんだろう? 鍵開けてやらないと入れんだろう」
『……。由香ちゃんが来たら、僕も行くから待ってて。櫂、くれぐれも気をつけろよ? そして……』
「ああ、判ってる。必ず芹霞を守るから。煌も桜もいる。とりあえずはその心配性を直せ。芹霞達拾ったら、また連絡するから」
軽く笑うと、電話口から玲の溜息が聞こえた。
『……僕を待ってろよ?』
何度も念を押し、玲は電話を切った。