シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
玲くんの目覚めは意外すぎるほど唐突に訪れて、若干の戸惑いと呆気なさはあったけれど、それでもあたしは純粋に嬉しくて。
本当に本当に嬉しくて…
「玲くん!!? 気がついたの!!? 戻って来れたの!!?」
玲くん、玲くん、玲くん!!!
「おかえりなさいッッ!!!」
あまりに感動して泣きながら、勢いつけて玲くんの胸に覆い被さると、玲くんの大きい手があたしの頭を優しく撫でてくれた。
顔を上げて笑うと、玲くんが綺麗な微笑を浮かべていた。
ほっこりとする。
「君達が…来てくれたんだろう?
――"僕"の領域に」
淑(しと)やかな微笑が、やがて艶ある魅惑的なものに変わりゆく。
"僕の領域"…って何の事だろう?
そんな僅かな疑問も湧いたけれど、それを打ち消すくらいの艶美な玲くんの声が続いて。
「だけど――"完全"にする為には
あっちの囲いの中に行かなきゃね」
鳶色の瞳の先には、黒い壁。
そして玲くんは――
「な!!!!」
櫂の腹部に拳を入れた。
それでも櫂は、両手を玲くんから離さず…身だけ捩って直撃だけは避けたようだ。
「ああ…かわしちゃったんだ。
此処で崩れ落ちた方が、良かったのにね。
ふふふふふ…」
そして身を捩るようにして、長い足をゆっくり横に回すような動作をしたかと思うと…玲くんは素早く櫂の背中に膝を入れた。
重い音を響かせて身を反らせた櫂の腕から、そして玲くんは起き上がり…地に両足をつけた。