シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
玲くんは突如、顔から冷酷さを払拭し、にっこり…いつものように微笑んであたしに手を述べた。
「おいで、芹霞。
"僕"を…怖がらないで…?」
その言葉尻の…頼りなげな響きに、あたしの体は無意識に動いた。
余りに寂しげに聞こえたから。
それはあたしがいつも、玲くんに感じているような…その感覚を大きくさせた。
いてあげなくちゃと、思ったんだ。
――条件反射のように。
指先と指先が触れ合うとする瞬間――
「芹霞、あれは玲じゃない!!!」
櫂が、あたしの腕を強く引いて、動きを制した。
「玲の…幻影、偽りだ。
玲が…俺を攻撃するはずはない」
それは悲痛さが混じった声は、櫂の心境をよく表しているように思えた。
信じたくない。
そう櫂は叫んでいる。
「罠だ、そうでなければ玲が俺を…」
そしてあたしの体を引き寄せた時、青光があたしと櫂の間に放たれて。
それを避けようと、思わずあたしと櫂が仰け反るように離れた隙に…あたしの体は後方から玲くんの両腕の中にすっぽりと覆われていた。
「穢らわしい。
芹霞に――触るな」
それが放たれたのは、紛れもなく…耳元で響く玲くんからで。
何処から発音されたのか判らない、低く怖い声音。
"穢らわしい"
そこには優しさの欠片もなく。