シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
――芹霞ちゃあああん!!!
まるで低速度(スローモーション)のように、櫂の両足から力が抜け、両膝を地につき…両手を地につき…四つん這いのようにして櫂は動かなくなった。
それ程まで、玲くんの顔での告白は、そして過去の画面は…櫂にとっては大衝撃のものだったんだ。
――芹霞ちゃあああん!!!
駄目だ。
このままだと櫂は壊れる。
あたしは――
――芹霞ちゃあああん!!!
壊れていく櫂を見ていられない。
「――櫂!!!」
しかし櫂の元に賭け避けようとするあたしを、玲くんは羽交い締めにするようにしてそれを阻んだ。
「ねえ…櫂。
少しでも"僕"に悪いと思うのなら。
…芹霞を"僕"に頂戴よ?
まあ、元々芹霞はお前のものじゃない。
承諾なんかいらないけれどね、ふふふ」
そして愉快そうに笑って。
「お前は、芹霞を手に入れる為に"僕"を犠牲にしたんだ。
間違った時間軸、リセットしようよ。
"僕"が芹霞を手に入れて、
お前は…昔のように泣き叫んで消えていけッッ!!!」
声を荒げて高笑いをした玲くんは、
あたしを真向かいに立たせて。
あたしの顔を覗き込む。
その端麗な顔は、やはり…櫂に向けていたような憎悪のものではなく、いつもの穏やかで優しいものでもなく…その裏に隠されていた激情で。
誤魔化すことも、そらすことも出来ない、直線的な熱情で。
「好きだよ、芹霞。
ずっとずっと…心から、君を愛してる」
その顔で紡ぎ出された言葉は、あたしの心臓を強く掴んだ。
此の場で、こう言われて…心動かない女はいないと思う。
それくらいの、真剣さがそこにはあって。
やっとの思いで、顔をそむけた時、
「判らせて上げるよ、僕の愛」
冷ややかな口調でそう言うと…
片手であたしの顎を掴み、無理矢理正面に向かせると…
あたしの唇を荒々しく奪った。