シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 

芹霞が抗ったのは、玲らしくない暴挙に出たからだ。


いつものように羽毛でくるむような優しさに満ちたものがあれば、どうだか判らない。


悔しいけれども、玲だって…芹霞の心に住み着いている。


俺には判る。


玲は暴挙に出たわけではない。

抑えていたものを一部解放しただけだ。


玲には違いないんだ。


俺にだってある。


無理矢理でも、力で抑えつけても…芹霞に心を見せたいという気持ちは。

例え泣いて喚いて嫌われても、それでも想いを解放したいという心は。


微妙な距離を踏み込んで、芹霞を俺の腕だけの中に閉じ込めたいと…どれだけ思ってきたか。


何度この胸切り開いて、これだけお前のことを愛しているんだ、だから向き合ってくれ、受け止めてくれと叫びたかったか。


口で言って伝わらないのなら、目で見せて確認させたかった。


12年間――。

俺だって、ずっとずっと我慢してきたんだ。


だからこそ、玲の動きが判る。

共鳴しあうように…。


想い続けた年数など…問題ではないのだろう。

年数が問題であれば、今頃芹霞はとっくに久遠に奪われている。


必死に芹霞を奪還して、それでも俺は…何も進めなくて。


決して、俺が有利なわけではない。


どれだけ近くで、どれだけ深く芹霞を愛してきたのか。


例えそれが1日でも、1ヶ月でも。

惚れ込んでしまえば、俺と同じ立場の…恋敵で。


人の気持ちに、甲乙つけることは出来ない。


俺が人の恋路に口出しすることは出来ない。


だけど――

深くキスを交わす芹霞と玲の姿は、俺の心を大きく揺すぶり、塩をつけて抉っていった。

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