シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「優しい優しい玲くんを、そんな風に言う時点で、あんたは偽物決定よ!!! 物理的問題なんて、此の際どうでもいい。あんたは偽物ッッッ!!!」
迷いなく、芹霞は目の前の玲を紛(まが)い物だと切り捨てる。
「玲くんはね、そりゃあ繊細な心の持ち主だけれど、どんなに傷ついても、もがいてもがいてもがき抜いて、逃げ出さずにちゃんと闘ってきて、それで前に進んできた強い人なのッッッ!!! あんたみたいにこの世界に閉じ籠もって、恨み言ばかり言って停滞しているような捻くれたネクラとは違うのッッ!!!」
玲が、ぎりぎりと歯軋りをする音がした。
「芹霞…よせ…」
このままだと、芹霞に害が及ぶ。
「よさないわよッッ!!! あたしはね、そうした駄々っ子が一番嫌いッッ!!! どんなに愛されているか判らずに、自分の悲劇に酔っているような自己陶酔型(ナルシスト)はッッ!!!」
玲の顔が歪まれる。
「か、神崎…もうやめておいた方が…」
遠坂も、流石に状況を見てやばいと判断したのだろう。
だけど芹霞は止まらない。
「やめないわよ、あたしはッッ!!! 櫂に随分なこと言ってたけれど、あんたどんなに櫂に愛されていたか判ってる!!? 此の世で一番不幸な人間はね、そうした愛に気づかない人間よッッッ!!!」
「煩い、煩い、煩いッッッ!!!」
玲が怒鳴りながら、気を爆発させた。
俺は慌てて結界を張り、芹霞と遠坂を引き寄せる。
「そんなに"僕"が悪いのか、そんなに櫂が偉いのかッッ!!! 所詮皆…櫂の味方をして、"僕"を扱き下ろして笑うだけッッ!!!
何だよ、その顔。なあ…芹霞。お前…調子に乗ってない?」
"お前"
俺の中で警鐘が鳴った。
目の前の玲が…壊れかけている。