シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
しかし桜は、手の中の携帯を見つめたまま、出ようとしない。
「どうした? 俺の前だからと遠慮しなくていいんだぞ?」
「は、はい…。ただ…見知らぬ番号からかかってきたもので…」
間違い電話だろうか。
「080ですから、携帯からですね。
…切りました。間違い装った敵からということも考えられますので」
警護団長は警戒心が強い。
いや、そうすべき過去が、俺の知らぬ処でも多々あったのだろう。
しかし――。
また携帯が鳴る。
それを桜が切る。
再び携帯が鳴る。
また桜がそれを切る。
そして――
「桜。鳴り止まないようだから、一度出たらどうだ?」
俺の苦笑に、桜は溜息をついて頷いた。
「もしも『鳴ってるの判ってるなら、さっさと出』
ブチッ。
また桜が携帯を切った。
「やはり。見知らぬ男からの間違い電話だったようです」
そしてまた携帯が鳴る。
「しつこいので、電源落としますね…」
電源ボタンを押そうとする桜に、俺は手を延べた。
「桜、ちょっとその電話貸せ」
凄く気になったんだ。
そう――。
怒鳴り声の裏側で、同時に聞こえた喧しい多くの音が、
まるで――
悲鳴のような危殆を孕んだもので構成されていた気がしたから。