シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
・拒絶 玲Side
玲Side
****************
名前を呼ばれたような気がして、僕は顔を上げた。
しかしそこには誰もいない、縹渺とした荒れた場所。
僕と…"エディター"しかいない、荒んだ世界。
永遠の…監獄。
第三者の声など…気のせいだ。
「どうして…泣いているの、私の王子様」
言われて初めて、僕は涙を流していたことに気づく。
何だろう。
酷く切なく、酷く哀しい。
「王子様は、いつも強く凛々しく。
泣いてはいけないわ?」
白く冷たい指先が僕の目尻から頬に滑り、僕は振り払うように頭を横に振る。
「ふふふ。まだ貴方は外の世界に執着があるようね。此処には私達しかいない。永遠に…私達だけの世界。不安がることはないのよ…?」
そして至近距離に居る彼女は、プチン、プチンと…僕のシャツのボタンを器用に外していく。
「ふふふ、きめ細やかな綺麗な肌。着痩せするタイプだったのね。ああ…愛しい」
手でなぞられた僕の胸が…拒絶反応に総毛立った。
幸いなのは、それを相手に気づかれていなかったこと。
「さあ…続きをしましょう、玲さん。私と…愛し合いましょう…」
決して恥じ入ることない堂々たる物腰で…彼女は自分の上衣を脱ぐと、下着姿になった。
僕の心は、体は…何一つ反応しなかった。
否――、あるのは更なる拒絶反応だけで。
まるで遊郭に売られた生娘のように、本能的な恐怖感に嘔吐しそうだった。
僕は…出来るだけの意志でもって、抗って暴れ出しそうになる心を抑えていた。
――イヤダ。
"僕"よ、目覚めるな。
僕は…納得したじゃないか。
――ガマンシタクナイ。
これだけねじ伏せた僕の心は、きっといずれは歪んだ形で僕に逆襲をしてくるだろう。
その危険は判るけれど…どうしようもなかった。
「再度確認する。僕が…君を抱けば、必ず櫂を助けてくれるね?」
"エディター"は笑う。
何処までも歪んだ顔で笑う。
僕をざわめかす狂気が、僕の心を殺していく。
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名前を呼ばれたような気がして、僕は顔を上げた。
しかしそこには誰もいない、縹渺とした荒れた場所。
僕と…"エディター"しかいない、荒んだ世界。
永遠の…監獄。
第三者の声など…気のせいだ。
「どうして…泣いているの、私の王子様」
言われて初めて、僕は涙を流していたことに気づく。
何だろう。
酷く切なく、酷く哀しい。
「王子様は、いつも強く凛々しく。
泣いてはいけないわ?」
白く冷たい指先が僕の目尻から頬に滑り、僕は振り払うように頭を横に振る。
「ふふふ。まだ貴方は外の世界に執着があるようね。此処には私達しかいない。永遠に…私達だけの世界。不安がることはないのよ…?」
そして至近距離に居る彼女は、プチン、プチンと…僕のシャツのボタンを器用に外していく。
「ふふふ、きめ細やかな綺麗な肌。着痩せするタイプだったのね。ああ…愛しい」
手でなぞられた僕の胸が…拒絶反応に総毛立った。
幸いなのは、それを相手に気づかれていなかったこと。
「さあ…続きをしましょう、玲さん。私と…愛し合いましょう…」
決して恥じ入ることない堂々たる物腰で…彼女は自分の上衣を脱ぐと、下着姿になった。
僕の心は、体は…何一つ反応しなかった。
否――、あるのは更なる拒絶反応だけで。
まるで遊郭に売られた生娘のように、本能的な恐怖感に嘔吐しそうだった。
僕は…出来るだけの意志でもって、抗って暴れ出しそうになる心を抑えていた。
――イヤダ。
"僕"よ、目覚めるな。
僕は…納得したじゃないか。
――ガマンシタクナイ。
これだけねじ伏せた僕の心は、きっといずれは歪んだ形で僕に逆襲をしてくるだろう。
その危険は判るけれど…どうしようもなかった。
「再度確認する。僕が…君を抱けば、必ず櫂を助けてくれるね?」
"エディター"は笑う。
何処までも歪んだ顔で笑う。
僕をざわめかす狂気が、僕の心を殺していく。