シンデレラに玻璃の星冠をⅠ

俺は鳴り続ける携帯の通話ボタンを押すと、携帯を耳から出来るだけ遠くに離した。


『ざけんじゃねえ!!! 

馬鹿ワンコの仲間はそれ以上に馬鹿か!!?』


これだけ離しても、耳につんざく男の声。


よく通る、高い声音の怒声だ。


キーキーキーキーと、まるで喧嘩中のサルを彷彿させる。



「馬鹿ワンコ…煌のことでしょうか」


俺は桜と目を合わせながら、慎重に携帯を耳に当てた。


やはり聞こえる。


雑踏の喧騒の多くは…確実に人間の悲鳴だ。



「お前は――誰だ?

何が起こってる!?」


俺の問いに、電話の主は何か言ったようだが、BGMが煩くてよく聞き取れない。


『ああ、くっそ!!! 悠長に電話してる暇ねえんだよ、突然女がばたばたと倒れてる非常事態に!! 

いいか、『黄色い外套男が渋谷に現れた。早く来い!!!』伝えたぞ、じゃあなッッ!!!』


ブチッ。


電話は強制的に切られて。
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