シンデレラに玻璃の星冠をⅠ


「醜い醜い狂気。それが解放されれば、きっと貴方は今の姿を無くしてしまう。ふふふ、動かないのは、狂気に縛られているのね? 狂気の恐怖でそうやって動けないのなら、私…最後のチャンスとして、貴方の狂気を宥(なだ)めて、貴方を動かして上げる」


ガラス玉のような青い瞳が、妖しい光を放った。


僕が動けないのは、狂気ではなく…拒絶感だということに、女は気づいていないのなら、勘違いしているのなら。


確かに…チャンスだった。


正真正銘、これが最後だ。


もしこれで僕が拒めば…櫂と芹霞に未来はなく、煌や桜だって、この先どう扱われるか判らない。


全て、僕が我慢すればいいだけ。


我慢すればいいだけじゃないか!!



黙っている僕の態度を是と捉えたのか、女は僕の顔に自分の顔を近づけた。


「さあ…見なさい。私の魔眼を。狂気を…私に頂戴」


深い深い青色は、何処か氷皇を彷彿させた。


それは決して綺麗なモノではなく…限りなく黒に近い青色で。


ああ――

僕は、僕の狂気が女の力の糧となったことを感じた。


荒れた世界が、どくどくと脈動する。


生気溢れたものと変わる。


此処は――"エディター"の心の中。


それは何処までも狂気で象られた世界。


潤えば…更なる狂気に満ちていく。


そして呼応したように、僕の気狂いの血が狂気にざわめき出す。

活力となる。


ああ、それは何て――

悪循環な…世界なんだろう。



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