シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
僕の唇に当るのは…未知なる熱い肉片。
軽く触れるだけが、僕の精一杯だった。
それを義務的にこなし、本能的に顔を背けようとした僕の首に、突如強い二の腕が回されて、僕の身体は下に引き摺られるように急傾斜した。
そして――
強く…唇という名の熱い肉を、押し付けられたんだ。
まるで、穢れの烙印の如く。
穢れは狂気と入り混ざり、僕が守っていた絶対領域にじわじわと侵蝕してくる。
僕の唇に、淫靡に蠢(うごめ)く未知なるもの。
僕は――
保健室で見た、膨張した蚕を思い出した。
ざらざらとした先端が僕の唇の表面を舐め回し、口腔内に進入してくる。
僕は…余りの悍しさに身を震せた。
それを僕の興奮と勘違いした女は、口の中で勢いづいた。
ああ…蚕が…巨大な蛆が僕の中に居る。
そう思えば――
不思議と…嫌悪感はなく。
抵抗しようという気力も起きなかった。
いっそひと思いに、殺されたかった。
肉体だけではなく、心までも…無残に食い散らかされるのが、僕の運命だというのなら。
ああ、それなら――。
僕は化け物(クリーチャー)に襲われていると考えよう。
その方がまだ、落ち着けられる。
仰向けに倒される体。
僕の身体が…無機質な棒きれのように感じた。