シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「玲……さん、応えて…?」
何一つ動かない僕に、女の媚びたような声が降りかかる。
――僕に…応えて?
ねえ、芹霞も…こんな気持ちだったのかな。
あの時の僕は、一方的に僕の想いをぶつけて暴れさせた。
僕だけ一人舞い上がり、懸命に愛を示せば…必ず応えて貰えるものと…僕は自惚れていたのかも知れないね。
好きじゃない女とする行為は…こんなに気持ち悪いものなんだね。
心が繋がれば自然に体も繋がるけれど、その反対は絶対的ではないというのなら、体と心の関係って…なんて複雑なんだろう。
乖離していながら結合も可能。
その矛盾が罷(まか)り通る、それが"人間"。
もう…僕は、その肩書きさえ、この世界で捨てることになるだろうけれど。
心は…捨てないよ。
心は…僕のモノだ。
誰にも手出しさせない。
「……り…」
僕の目から、零れ落ちる滴が…もう会えない最愛の女性を映す。
「せり……」
好きだよ。
愛しているよ。
君を想えば…体は動くのにね。
ほら…手だって、君を引き寄せるために動くのに。
「せり…か…」
宙に浮かべた手は――
女に握られた。