シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
そして声を上げ続ける"エディター"の反対側には煌が、同じように両手を突き出していた。
煌からも、何かの力を感じる。
初めて感じるものではない。
これは――。
「増幅だって。約束の地(カナン)でもしてたでしょ、煌。今、櫂の力を増幅して…此処から、玲くんを苦しめる黒い元凶を根こそぎとるんだって」
芹霞が笑った。
「でも煌…腕環…」
「うーん、出来るみたいだよ。ちょっと煌を見直したわ、あたし。やるときゃやるんだなって。だったら…いつもやればいいのにね」
僕は――
漆黒の狂気の闇が、櫂がいる方向に吸い込まれるようにして移動しているのを知った。
僕は…何を何処から考えていいのか判らず、混乱した。
やはり、これは夢なんだろうか。
もう会えないと認めた故に起きた…"エディター"の防衛本能だろうか。
僕は…狂気の世界に溶け込む寸前なんだろうか。
だけど――
「玲くん。あたし達を…あたしを信じられる?」
魅惑的な黒い瞳。
僕がずっと縛られ続けてきた、強い瞳。
そこには一点の濁りなく…
僕が愛する女性だと確信した。
愛すればこそ判る。
この芹霞は…真実の芹霞だ。
ならば――
「あたし達が、玲くんが大好きだから、此処にいるんだっていうこと…信じてくれる?」
何を疑うことがある?
君がいて、君が言っている言葉を…
どうして僕が疑える?
「信じる」
僕は――
深く頷いた。
「信じる…よ、君が言うのなら」
僕は微笑んだ。
先刻までは笑えなかった僕は…自然と微笑が出来たんだ。