シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
ああ、君にかかれば…何と容易く、呪縛が解けるのだろう。
感動すら覚えてくる。
君が言うのなら、僕は無条件で信じる。
これは…僕にとって奇跡な現実。
途端芹霞は、鼻を片手で押さえながら、
「よし、やっぱり本当の玲くんは、こうだよね。よかった、あいつみたいに聞き分けなければ、あたしまたぶん殴る処だったよ」
そう笑った。
指の間からは、真紅の滴がぽたぽた地面に垂れていて。
「神崎ほら、ティッシュ、ティッシュッッ!!」
由香ちゃんが慣れた手付きで、銀色の袋からポケットサイズの"鼻セレブ"を取り出し、芹霞に渡した。
「よかった…鼻セレブで!!! 保健室で煌に堅いティッシュを無理矢理鼻に詰められて、ヒリヒリしていたから。この柔らかさとしっとり感…最高!!!」
「そうだろ、まだ予備は沢山あるから。ああ、第二保健室で『翠くん専用』のものをくすねたんだ。元手はタダだし、遠慮無く鼻血吹き出してもいいぞ」
「……」
…どうして、芹霞が煌の前で鼻血を出したのか気になったけれど。
しかも僕のいない間に、何をしていたのか問い質したくて仕方が無かったけれど。
今は…やめた。
もっと質問すべきことがある。
「本当の僕って、何? "あいつ"って?」
すると芹霞は、櫂の近くで横たわっているモノを指さしたんだ。
それは――
「これで、戻れるね。玲くん」
"僕"だった。