シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 
ああ、君にかかれば…何と容易く、呪縛が解けるのだろう。


感動すら覚えてくる。


君が言うのなら、僕は無条件で信じる。


これは…僕にとって奇跡な現実。


途端芹霞は、鼻を片手で押さえながら、


「よし、やっぱり本当の玲くんは、こうだよね。よかった、あいつみたいに聞き分けなければ、あたしまたぶん殴る処だったよ」


そう笑った。


指の間からは、真紅の滴がぽたぽた地面に垂れていて。


「神崎ほら、ティッシュ、ティッシュッッ!!」


由香ちゃんが慣れた手付きで、銀色の袋からポケットサイズの"鼻セレブ"を取り出し、芹霞に渡した。


「よかった…鼻セレブで!!! 保健室で煌に堅いティッシュを無理矢理鼻に詰められて、ヒリヒリしていたから。この柔らかさとしっとり感…最高!!!」


「そうだろ、まだ予備は沢山あるから。ああ、第二保健室で『翠くん専用』のものをくすねたんだ。元手はタダだし、遠慮無く鼻血吹き出してもいいぞ」


「……」


…どうして、芹霞が煌の前で鼻血を出したのか気になったけれど。


しかも僕のいない間に、何をしていたのか問い質したくて仕方が無かったけれど。


今は…やめた。


もっと質問すべきことがある。


「本当の僕って、何? "あいつ"って?」


すると芹霞は、櫂の近くで横たわっているモノを指さしたんだ。



それは――



「これで、戻れるね。玲くん」



"僕"だった。
< 949 / 1,192 >

この作品をシェア

pagetop