シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「玲くんが"暴言"で櫂に喧嘩売った時、煌が助けに来たんだ、突然」
「煌が?」
「うん。玲くんを助けるのは俺の役目だとか何とか言って、後で飛び込んできたの、玲くんの中に…」
「……」
「玲くんの中で、おいでおいでしている闇があってね、それで"玲くん"ちょっと暴走しちゃったみたいだね。皆、それ判っているから」
玲くんは…黙ってあたしを見ていた。
あたしは…偽りを言っていない。
「ねえ…櫂は、どうだった?」
微弱な声音に、あたしは笑う。
「玲くんを取り戻すのに必死だったよ。玲くんの"暴言"にもめげず、本当に必死だった」
玲くんは俯いて、黙り込んだけれど。
「櫂は、何があっても…玲くんが大好きだからね」
それだけは判ってもらいたい。
「櫂だけじゃない。あたしたち全員、玲くんが大好きだから。ポジティブシンキングだよ、玲くん」
そうは言っても優しくて繊細な玲くんは、自分を責めているんだろうなと苦笑した。
重い沈黙が続き、場の雰囲気を盛り上げようと、由香ちゃんが口を開いた。
「師匠、神崎凄かったんだぞ、"もうろく爺"、"オタンコナス"、"聞分けのない子供"、"馬鹿者"、おまけにはこびりついた"黒コゲ"扱い」
「由香ちゃん、それは言わなくてもいいでしょう!!?」
慌てて由香ちゃんの口を押さえたけれど、時既に遅し。
玲くんは俯いて黙ったままで。
あたしは、彼を怒らせてしまったのだと思った。
普通怒るだろう、如何にその時衝動的であったとはいえ、罵詈雑言…ぶつけたのだから。
改めて聞く限りにおいて、それは少なくとも玲くんに向ける言葉ではない。
どらかといえば…煌に怒っている時の台詞だ。