シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
怒っている。
目茶苦茶怒っている。
あたしを後方に放り投げ、憤然と玲くんを見据えている。
玲くんも…櫂のご立腹具合に、少々顔を引き攣らせていて。
「か、櫂…あ、あのね…」
「……」
聞く耳持たないという感じで。
「ゆ、由香ちゃん…どうしよう、ねえ由香…」
「ご、ごめん…神崎。ボ、ボク…君と師匠の見ていたら、腰砕けになって…」
動けないらしい。
煌に目を向けた。
煌は"エディター"を紐のようなもので縛り上げている。
黙々と働いている。
まるでこっちを無視して。
だけど判る。
怒りのオーラだ。
完全無視を決め込んだらしい。
仕方が無い、此処はあたしが…
「櫂、落ち着こう? ね?」
しかし櫂は見向きもしない。
更にずいと玲くんに足を1歩前に踏み出すと、片手で彼の胸倉を掴んで。
「櫂!!?」
剣呑な空気にはっとしたあたし。
たけど、櫂はあたしを無視していて。
「お前…やりすぎなんだよ、玲。
判っていてやっていただろ、お前。
俺、言ったよな?
戻ったら、覚えておけって」
静かに静かに――
鋭い目が更に鋭さを増させるか如く、細められていく
ゆらり。
櫂が玲くんに近付いたと思うと、
「な!!!!」
何と櫂は…玲くんにキスしたんだ。
唇に。