シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
渋谷駅間近にして、道路に救急車やパトカーが入り交じり、一般車は身動き取れなくなってきた。
「桜!!! 走るぞ!!」
待つには耐えられない、そんな態度の櫂様の声に頷き、私達は駆け出す。
並列に位置するバスの停留所。
建ち並ぶ高層ビル。
何処だ。
芹霞さんと煌は何処にいる!!?
私と櫂様は、2人の気配を追って渋谷駅のハチ公を通り越した。
喧騒が一段と増してくる。
耳障りな何かの曲。
それをかき消すような…
まるで狂ったかのような叫び声。
そして正面、鋭角の土地に聳(そび)える円筒状の建物。
"渋谷109"
若者に人気の建物が見え始めたとき、混乱(パニック)の涙声は最高潮となり。
「な!!!」
地面に倒れている、血に塗れた女達。
女…。
そう、制服を着た女ばかり、数人。
ああ――
その眼窩からは血が流れ…
眼球が何もなく。
思わず顔を強張らせた時、聞き慣れた…煌の声が響いた。
「櫂まで!!? 悪いッッ!!!」
煌が結界を張っているのが判った。
守りよりも特攻派の煌が、じっとして私達を待っているのは珍しいこと。