シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 
『皆……すまなかった。あたしの力が…足りないだけに、玲を…危険に合わせて…お前達まで…生身で此処に引っ張り込む…羽目になった。

不安定…かもしれないが、これでも何とか体調が戻ってきたし…あの朱貴があたしの力の足りない部分を、外から補ってくれるというから…

あたしは、玲…お前を作ろうと思う』


おかしなこと言い出した。


「玲くんを…?」


代表して、芹霞が首を傾げる。


『芹霞。以前…あたしは、この"エディター"の夢に誘われ入ったことがある。玲や上岐妙に初めて会った時、薄々予感はしていたんだが…この中に潜って確信した。残留思念に…見覚えがある』


「そういえば紫茉ちゃん、イチルに取り憑かれて人を殺したと上岐妙が訴えた後、」


――葬式…憎悪、絞殺。あれは…あたし自身が噂話に影響されたものではなく…上岐先輩の夢に同期(シンクロ)していたものだったのか?


「って言ってたよね、そういえば。ねえ玲くん覚えている?」


「そうだったね、それで何かの力があるのかって、その時僕は思ったんだ…」


「ねえ紫茉ちゃん、それで玲くんを作るってどういうこと?」


『この主は……"王子様"がどうして…も必要…らしい。玲が……。玲と潜った時より…傍観者のあたしでさえ…それだけは強く感じられた…程に。"王子様"…"夢の国"…"サンドリオン"……』


「サンドリオン? 七不思議の?」


櫂が訝った声を出す。


『……かどうかは…判らないが…彼女、"王子様"を見つけたくて…仕方が無かったんじゃないか?…だから、偽者の…"王子様"を…据え置く。それが一番…"安心"だろうと…思うんだが…?』


「だけど紫茉ちゃん、この世界で勝手に"作って"はいけないんだろう? それに…今の君の状態では…」


『朱貴が…いる。珍しく…本当に青天の霹靂で…朱貴が補佐してくれる…なら、今しかやれない。やりたいんだ…。

ただ問題がある…』


俺達は耳を澄ました。


『あたしは…外貌を作れても…多分、心は創れない』


成る程。

"お姫様"を安心させる"王子様"の心がないというのか。


つまり、作れるのはあくまで形、傀儡だけ。



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