シンデレラに玻璃の星冠をⅠ


「は?」


櫂が一番驚いた顔をした。


そりゃあそうだろう。


今まで櫂と顔突き合わせて、闇の力を抑えていたんだ。


その櫂が、ずっと気づかずにいたのだから。


「事情があって…な。

まあそんなことより。脱出するには、肉体があれば、周涅の術を抜けないといけないだろうから時間がかかる。その点、意識だけの場合は…七瀬にひっぱりあげてもらうから、まあ…あれだ。直通エレベータで、一気に屋上に到着…みたいな?」


「煌…お前……」


やばいな。

櫂と玲は…俺が意識だけの状態だということに疑問持ち始めている。


段々と細くなる、漆黒と鳶色の瞳。


そうなるに至った理由を聞きたがっている。


だから頭のいい奴は嫌だ。



「戻ったら判るから。今は説明してね時間ねえっての!!!」


俺は誤魔化しながら、櫂と玲の背中を押した。


「煌。でも"エディター"目覚めたら、あんた1人で…」


心配気な目を寄越す芹霞の頭を、ぽんぽんと叩いて俺は笑う。


「意識は痛みは感じねぇんだと。体力は消耗するみたいだけれど。

それに縛っているあの縄さ、桜の裂岩糸なんだ。あいつが快く思わねえ"敵"に関しては、そこいらよりも頑丈だ」


――聞こえてるか~い。この子は……だよ。


「何で、煌が桜ちゃんの武器を? 今、桜ちゃんは?」


――……で1本。


気づかなくてもいいよ、阿呆タレ!!!



――…くん、……使って、……を頑張ってみる~? でも数が少ないねえ?


「戻れって。早く戻って桜と合流してくれ!!! いいか、櫂が間に合わないと全て水の泡なんだからな!!! 急げよ!!!」


「でも……」


「玲!!! 皆引き連れろ!!! じゃねえと、俺が来た意味ねえじゃないか!!!」


苛立って玲を見て叫ぶと、玲は何かを訴えかけるような目をして…そして頷いた。


「判った。櫂、皆…行こう」

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