シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
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この世界の主を"恐怖"させて目覚めさせようとしたその効果は、時々薄くなる蓑虫"エディター"と景色の様子でよく判った。
だけど、置き土産を確定するまでに…俺達は此処を追い出される訳にはいかず、それを七瀬が、揺らぐ世界を故意的に支えているらしかった。
『朱貴が…いるから、消耗が……緩やかでいい』
そんな笑い声が聞こえるけれど、それでも辛そうだ。
相当の力を使っているんだろう。
尚且つ、玲も心配していた"創造"。
目の前には、玲そっくりな動かない人形がいる。
本当に見事だ。
『玲の…外貌は…こんなんでいいかな。お前の目から…おかしな処があれば…言って貰いたい』
七瀬の記憶で成り立つ玲の姿。
どんなに周りをぐるぐる回ってじろじろと眺めても、完璧の出来映えだと思う。
つんつんと指先でつついても本物と違和感ねえし、細かな処に黒子まである。
俺でさえ判らなかった玲の鎖骨付近の黒子…すげえ観察眼だよな。
服の下の…隠された部分を、じっくり見て、日頃の恨みとばかりに散々弄り倒してやりたい気もしたけれど…何だか恥ずかしくなってやめた。
俺だって、人並の羞恥心くらいあるし。
何よりばれたら、後が怖ぇし。
『どうだ? 違和感ないか? ちょっと…あたしなりに"表情"作ったんだが…』
途端。
無表情の玲が、にっこり笑った。
優しく微笑する…白い王子様だ。
「すげえ…本物みたいじゃねえか」
「ありがとう、嬉しいよ…」
「すげえ…喋る!!!」
俺、"すげえ"しか言って無いけれど、驚嘆しまくりだ。
だけど――
「……。お前名前なんて言うよ?」
会話をしてみると…
「紫堂玲。君の名前は? 僕の可愛いお姫様…」
鳶色の瞳には、間違いなく俺が映っているはずなんだが…。
ゾッ…。
背中に寒気が走る。