シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 

一応…


「き、如月煌…だけれど…」


「煌ちゃん? 可愛い名前だね、お姫様」



ゾゾッ…。


「こ、煌ちゃん…? それにお、お前…男に向けて"お姫様"はないんじゃね?」


そう…引き攣って言えば、


「ふふふ。照れてるの、可愛い僕のお姫様? 愛しているよ」


頬に添えられようとした手を払った。


ゾゾゾッ…。


寒い、寒すぎる…。



試しに――


「アホ…」


そう言っても、


「ありがとう…嬉しいよ」


アホの子じゃねえか、この玲。


「アホ、バカ、死ね、カス」


にこにこにこ。


ああ、外貌は確かに玲だけれど…違和感がありすぎる。


玲じゃねえ…。


優しければいいってわけでもねえだろ、幾ら"エディター"でもこれなら偽物だとばればれだって。


これなら、機械と会話しているようなもんだ。


いつもの"えげつなさ"で覆われた玲の方が、よっぽど人間らしい。


そうか…。


玲特有の…"心"がねえんだ。


それがねえから、いつもの"えげつなさ"もねえし、第一あの腹立たしい"色気"もねえ。


ああいうのは…整いすぎる器から滲み出るもんじゃねえんだな。


玲は俺みたいに喜怒哀楽を顔に出さないタイプだけれど、こうして見れば…すぐ"えげつなく"、"色気"を無駄に垂れ流す玲でも、"心"で覆われていたんだと実感する。



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