シンデレラに玻璃の星冠をⅠ


そういえば、玲の心の中にいたブラック"玲"だって、荒々しい印象はあったものの、溢れるばかりの色気はあまり感じなかった。


意識側の玲と、肉体側の"玲"。


意識側の玲は、あくまで玲が認識しうる…俺達が見ている表層の玲100%で、肉体側の"玲"は、俺達が見えないブラック"玲"100%だと思っていたけれど…どうやらそう単純な配分ではなかったんだろう。


線引きが曖昧で、分離方法が特殊だったせいもあるが、意識の玲にも"玲"は残っていた。


俺達が相対していたブラック"玲"は、あれだけが隠された全ての"玲"じゃねえんだろう。


狂気に邪魔されていたこともあるし、同時に"意識"が存在していたこともあるけれど…何より櫂への恨み言が多くて、芹霞への想いが少なすぎた。


玲の想いを見ていれば、もっと激しく芹霞を求めてもおかしくねえはずで。


それなら、意識の玲の方が愛情に溢れている。


深層部に隠蔽していた想いが…表層部分に流れ込んで、現在"意識"に染まりつつあるという解釈も出来るかもしれねえし、本当に、玲っていうのは…単純に出来てはいねえんだろな。


"心"っていうもの自体、人間なんかでは理解出来ねえくらい複雑怪奇なものなのかもしれない。


心について語っていても、結局俺達は…実物を見たわけではねえし、こうだろうという雑学を元に、勝手に予想しているだけで。


実際の処は、何も判らねえ。


多分、優秀な櫂の頭脳に頼っても…それは暴くことは出来ねえはずで。


結局は、都合いい…俺達の主観で納得して落ち着く以外に何もなく。


何処にあるどんなものが、真実の"心"というものなのか…結局、"心"という定義は、曖昧なものでしかなく。


だけど、こんな馬鹿な俺の頭でも判ることは。


2つの玲を混ぜて、そして真性ブラック"玲"として目覚めさせた時、恐らく――あいつは力に訴えてでも、芹霞を奪いに来る。


今以上に…凄まじい艶気を垂れ流して、さ。
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