シンデレラに玻璃の星冠をⅠ

あの時の"絶望"通り越して、狂気を纏った残酷な王様に変貌し、目的の為に皆殺しして高笑いくらいするだろう。


幸いにも…俺達は、そうした場面にぶち当たらなかった。


表層玲の我慢強さに、助けられたんだ。


玲がそこまで"エディター"を嫌わねば、どうなっていたか判らねえ。


流されてあの女を抱いていたら…その反動でブラック"玲"は真性に目覚めたかも知れねえ。


まあ…今となっては、全て…もしもの話しだけれど。


『どうだ…?』


七瀬の再度の問いかけに、


「女でも…不審者に思うぞ? 好きだ、お姫様だと笑えば許されるってもんじゃねえだろ。第一、玲を構成する"色気"がねえよな、この玲…」


俺は玲の人形を見ながら、率直にそう呟いた。


「例え動いて話しても、まず色気がねえ玲は、嘘臭ぇ。…違和感がある」


『はぁ……やっぱり…"心"は…あたしの理解を超えるか…。色気…か。やはり……な。一応…頑張ってみたんだが…。芹霞相手だと…そんな感じかなって…』


「盲目的に溺愛してる処は似ているかも知れねえけどよ、玲は溺愛=色気で、あんなアホじゃねえぞ?」


ああ、何玲を擁護して庇っているんだろ、俺…。


「色気…それが玲の心から滲み出る…"愛情"…。色気など…あたしには無縁だし…』


考え込むような沈黙があり、そして声が響く。


『よし、煌。お前の力を貸せ。お前にだってあるその色気…どんな状態で出るのか…ちょっと教えてくれ』


「は!!? 俺!!?」


俺にあるのか、んなもん。

あるのは櫂だろ、俺なんて…。
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