シンデレラに玻璃の星冠をⅠ

――"櫂様"が戻るまで、1時間毎に君の大切な指を貰うよ~。条件は、"声を上げるな"に加えて"気絶するな"。妙な動きしても、即座に、ワンちゃんの息の根止めるからね~。



それで煌の命が保証されるのなら。


正直…煌の肉体は、もう一押しされれば…死の淵に堕とされる、崖っぷちの場所にあった。



だから私は――


了承した。


――じゃあ君のお得意の裂岩糸、これから旅立つワンちゃんに預けて? 抵抗する気ないって、見せてよ?


私から武器を取り上げ、煌の手に持たせた。


――ワンちゃ~ん。聞こえてるか~い。この子は人質だよ。櫂くんみつけても、とんずらしないでね? まあ…してもいいけどね、この子が苦しむだけだし。


――ねえ、そこでこっそり式でワンちゃん回復させようとしている翠くん。優しい周涅ちゃん、君に選ばせてあげる。周涅ちゃんの攻撃か、回復か。


――翠くん、式神使って、葉山ちゃん回復を頑張ってみる~? でも数が少ないねえ? 5時間しか持たないよ? それとも葉山ちゃんじゃなく、ワンちゃん治す? 2体でも…顔の腫れと足の傷しか回復出来ないのなら、完全回復まで…あと何体必要なのかねえ?



――翠くん、どっち助けたい?


煌が何か言おうとしたけれど…周涅が何かを唱えると、目の焦点が合わなくなってくる。


煌の手の中の…裂岩糸が薄くなる。


――ははは~ワンちゃん…何言おうとしたんだろうね? ああ、もう意識薄れてきたようだね~、向こう側では痛みないと思うよ? 安心していってらっしゃ~い。


そして。


裂岩糸と共に、煌の意識が…完全に離れたのを感じた。


――じゃあ葉山ちゃん。スタートってコトで、まずは1本~


そして、始まったんだ。


私と周涅のゲームが。

< 988 / 1,192 >

この作品をシェア

pagetop