シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
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「周涅~ッッ!!!」


皇城翠の甲高い声。


「お前、お前ッッ!!」


「だからあ、翠くん。周涅ちゃん…君の"式"なら反抗してもいいよって言ってるじゃない。だけど周涅ちゃんへの攻撃か、葉山ちゃんの回復か…どちらか1つ。

全て葉山ちゃんの回復に回すから、結局葉山ちゃんの痛みは続いているんだよ~? いいんだよ、攻撃してきて。勝てるもんならね。

あれ? あれあれあれ~? 攻撃してこないの翠く~ん。ああ、そうか。もう使いきっちゃってたか、あのオレンジワンコの治療で、先に2体使っちゃってたから紙に戻っちゃったか。お気の毒~。はははは~」


「ああ~ッッ!!! くそッ!!!」


そんな苛立った怒声と共に、朦朧とした意識の中で翠の声が響く。


もう何度も何度も聞いた台詞。


「ごめん、本当にごめんッッ!!! 俺に力がなくてッッ!!!」


折角…力を回復して出てこれるようになった式神は、私の指の回復と馬鹿蜜柑の…中途半端な治療に使われ、最後の1枚も再び符呪に…無に還った。


「別に君のせいじゃないよ、翠くん。優しい周涅ちゃんは速攻殺さず、条件出しててあげてたじゃない。葉山ちゃんも…オレンジワンコにも。

声を上げたら痛いことはもうしないって。耐えられないのであれば、声上げてさっさと出て行けばいいんだよ、この皇城から」


視界の端には…ぐったりとして動かなくなった馬鹿蜜柑。


皇城翠のおかげで、何とか見られる様子の肉体。


両腕、両足を折られ、内蔵もかなりダメージを受けているはずだ。


それでも煌には、制裁者(アリス)時代に培った…脅威の回復力があるから、6時間以上も経てば、初期よりは幾分マシにはなっているはずで。


そうでなければ、許さない。


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