シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
今まで私は誰かに守られることを、弱さとして"恥"としていた。
私が守ることがあっても、絶対私は守られることはないと…そう信じて生きてきたはずの私は、不思議と――「現実を見てから言え」と翠を毒づく気分にはなれなかった。
櫂様を守る為に煌が、その煌を守る為に私が、私を守る為に皇城翠が。
面白いくらいの助け合い。
以前の私なら、真っ先に唾棄していた相互協力。
それもまた面白いと思う自分がいるから。
慟哭のような叫びを聞きながら、私が思わずふっと顔を弛ませた時、
「は~い、3本目の肋骨のお時間~」
周涅は容赦なく――
手刀で私の肋骨を砕き、私は…漏れそうになる声を必死に堪えた。
「馬鹿だねえ、ワンちゃん見捨てれば痛い思いしなくてすむのにさ~」
あれから刻々と時間だけが過ぎゆくが、櫂様が帰ってくる気配が無く。
それでも私は、信じ続けていた。
必ず、櫂様は帰ってくる。
視界に入る私の腕時計。
0時まで…あと、4時間。
4時間後には、この男を殺してやる。
調子に乗るのも、今の内だ。
――そんな時だった。
突如開いた襖から…
櫂様が出てきたのは。
端正な顔。
切れ長の目。
何処までも漆黒の闇に覆われた――
ああ、違う。
この…咥え煙草の、廃れた雰囲気。
乱れたような服装。
これは――!!!
「いい加減…始末しろ、周涅。
雄黄が外出したら、ずっと俺一人で退屈だ」
久涅――!!!