シンデレラに玻璃の星冠をⅠ

泣きたいくらいに、待ち望んでいた櫂様。


だけど…


どうして現われたんですか、櫂様。


此処は…此処は…!!!



「初めまして、紫堂の元次期当主。現当主から、君の噂はイロイロ伺っております。僕は周涅ちゃんといいます。妹の紫茉がお世話になってます」


ぺこりと、周涅は頭を下げた。


何処までも人を馬鹿にしたような物言いで。


"元次期当主"。


頭が…怒りで沸騰しそうだ。


「へえ、もう…紫堂と繋がっていたんだ? 随分とまた、大歓迎なことで」


横から現われたのは…玲様で。


本当に…涙腺が弛んだ気がした。


ああ、煌は無事に玲様を救い出した。


少しだけ。


少しだけ、見直してやる!!!


後ろから芹霞さんと遠坂由香も見える。


大丈夫、元気だ!!!


「うわっ!!! 何で久涅と蒼生ちゃんがいるの!!?」

「神崎、色違うから…これが七瀬の…」


周涅と久涅は、下卑た笑いを浮かべて、次々と現われる人間を見ているようで。


その余裕さが、凄く気にはなったけれど。


だけど、だけど…


「煌は…馬鹿蜜柑は!!?」


いない。


というか、起きる気配がない!!


視界の中でいつも自己主張する、あの派手な蜜柑色が、動かない。


まさか、まさか!!!


先刻久涅に踏み付けられた衝撃で、死んでしまったのでは!!?


煌は…瀕死といっても過言ではない状態なんだ。

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