先輩のボタン【卒業記念ショートストーリー】
私は、1位の人を案内する係りで…
「こっちです。」
息を切らした先輩を列に誘導した。
「見てくれた?俺のごぼう抜き~!!」
乱れた髪のまま、私に声をかけてくれた。
時間が止まっちゃったよ。
「見ました!!見ました!!ずっと見てました!!すごかったです!先輩すごいです!!」
興奮して、先輩の目を見つめたまま大声を出す私。
「あははははは…まじ~?ありがと!」
巻いていたはちまきが…落ちた。
「先輩、これ!落ちました!」
先輩の腕をとっさに掴んでしまった。
筋肉のある少し汗をかいた腕に触れてしまった。
「あ!もういらね~!!俺、早坂れん!お前は?」
一瞬夢かと思った。
はやさかれん。
はやさか れん
はやさ かれん
名字の最後が『か』だった。
「私!!!!可憐って言います!!」
先輩は、私の興奮気味な顔を見て笑い出した。
「おぉ!可憐!!俺とかぶってんね~!!」
焼けた肌に汗が輝く。
素敵な笑顔で
私を虜にした。