先輩のボタン【卒業記念ショートストーリー】
初めて先輩を見た日も
雪が降っていた。
高校1年の冬…
授業中、窓から外を見ていた私の目に飛び込んできたのは
あまりにも幸せそうに笑う一人の男の人。
赤のパーカーに、学ランを羽織ったスタイルで…
授業を抜け出して、中庭を走る姿に
目を奪われた。
私は真面目で
規則を破りたくても絶対に無理な性格。
自由で
鳥のように見えた。
まるで背中に羽根が生えているかのように
軽やかに駆けてゆく背中。
『赤いパーカー』
私の胸の中にインプットされたその情報。
名前も
学年も
何も知らない。