先輩のボタン【卒業記念ショートストーリー】
卒業生退場。
最後まで先輩は笑顔だった。
堂々と胸を張り、歩く姿。
さっきまであんなに寒かった体育館が熱気で暖かくなっていた。
体育館を出た卒業生は、泣いたり、騒いだり、池の水をかけあったり…
私達2年生には入ることのできない空気だった。
持ってきたカメラも使えないかも知れない。
『第2ボタンください』も
言えないかも知れない。
先輩の笑い声が聞こえる体育館の入り口で泣いた。
追いかけることなんてできない。
ずっと応援してくれていた友達の胸でいっぱい泣いた。
真っ黒なカーテンに包まれて、3人で抱き合って泣いた。
先輩、ばいばい。
先輩、ありがと。