闇の天使~月夜の天使・番外編
いつものようにポットにコーヒーを入れて屋根裏に上ると、既に紫貴が部屋の真ん中に立っていた。


「紫貴、今夜もとりあえずコーヒーにしましょうか」


紫貴はゆっくりと振り返り、


「君のコーヒーは、うまいよ」そう言って目を細め、口の端を微かに緩めた。


今にも消え入りそうな「笑顔」だった。


彼の笑顔を見たことはない。


でも、確かに笑顔だと感じた。


彼が初めて見せてくれた笑顔なのだと。


「紫貴が飲んでくれるのが嬉しくて、コーヒーを入れるとあなたが来てくれる気がして、毎日入れているうちに私も好きになっちゃったわ」


私は紫貴の笑顔を見れたことが嬉しくて、彼にそれを伝えようか迷っていた。


でも、笑顔について触れると、彼がどこかに消えてしまいそうで、私は怖くなり口をつぐんだ。



「いずみ、君はいくつになった?」


紫貴はポットのコーヒーをカップに注ぎながら不意にそんな質問をしてきた。


「もうすぐ18歳よ。・・・今回は何歳まで生きられるかしらね」


紫貴はコーヒーを注いだカップを私に差し出すと、自分のカップに口をつけ、一気に飲み干した。


「オレはもうすぐ消えるだろう」


不意の言葉に私は、何を言われたのかわからなかった。


「紫貴?」


「オレは月の神子を護ること以外に生きる目的をもたない。そういう契約のもとに生まれた戦いの天使だ」

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