闇の天使~月夜の天使・番外編
「紫貴、それなら私だって神子を護るために生まれた者よ。愛なんて私は知らない。愛なんて・・・!」


愛という言葉を口にした瞬間、何かがはじけた。


私は持っていたカップが手から滑り落ちるのも構わずに、紫貴に駆け寄る。


カップが割れる音と同時に私は紫貴の胸に飛び込んでいた。


「紫貴、月に逆らってもいい?月に産み落とされてからずっと封印してきた言葉。今だけよ。永遠じゃなくてもいい。今だけだから・・」


紫貴が答えるのも待たず、私はその言葉を口にする。



「紫貴・・・愛してるわ」



「愛の魂」の封印が解ける。


窓のないこの屋根裏で、月の視線から隠れるように私は愛を告白した。


紫貴の答えは何も聞こえてこない。


沈黙が流れる。


このまま、紫貴がどこかへ行ってしまいそうで怖くなった私はそっと紫貴の顔を見上げた。


紫貴は真っ直ぐに前を見つめたまま、表情は無表情のまま何も変わらない。


ただ、涙を流していること以外は・・・。



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