闇の天使~月夜の天使・番外編
新しい運命
天使の泉の一室。


天使の微笑みの美織を見て、つい昔愛した人、私の天使だった紫貴・・・あなたを思い出してしまった。


私は水晶を見て美織の未来を頭に描き出す。


本当は水晶など必要がなかった。


紫貴とキスして以来、私には魂に封印をかけている月の一族以外の人の過去と未来なら見えるようになった。


「あなたがどうしてもう一度ここへ来たのかわかったわ」


美織は澄んだ瞳で私を見つめる。


「記憶を取り戻したのね。そして自分の気持ちを確かめたくなった」


「・・・はい。プロポーズをされてすごく嬉しかったけど、どうしても忘れられない人がいることも、思い出したんです」


私は紙にペンで走り書きをすると、それを美織に渡した。


「その日付・時刻に、その教会へ行きなさい。そこにその人がいるわ。そうすれば、答えが出るはずよ」


美織は天使の笑顔で「ありがとう」と言うと、一礼して部屋を出て行った。


教会で笑顔で十夜を見つめる彼女が見える。


大丈夫、彼女は新しい運命を生きていける。


そして、私も新しい運命を生きている。


紫貴。


あの炎に包まれた夏祭りの夜。


あなたはとうとう還ってはこなかった。


あの天使の微笑みを残して。

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