桜風 〜春の雪〜
あたしが…この学校を選んだ理由。


この桜の木が

大好きになったから…

だから、あたしは今…

ここにいるんだ。


春雪と…出会わせてくれた…

お婆ちゃんと肇さんの悲しい恋の物語……。



あたしは…あのお婆ちゃんのように…

強く…

強く…

愛し抜くことが―――

出来るの??


一馬は…

ずっと…あたしを見ていた。




顔中に広がる苦渋……


「俺は、間違ってしまったかもしれない。
……花梨を苦しめたくないって…森定の気持ち…わかってたはずなのに。」



一馬の顔は……

どんどん苦しさに支配されてゆく……

「花梨が…何も知らずに苦しんでるの…見てるのが辛くて耐えられなかった。俺って…サイテーだよな。」


一馬の瞳から涙があふれ出す…


「……かずまぁ〜。」


限度無くこみ上げてくる熱い涙に……

喉を捕まれて、上手く声がでない

でも…

これだけは……

伝えたかったんだ。



「ありがと……。」



知りたいと望んだのは

あたしだよ。

自分を責める事なんてない。



あたしは…

絶望と戦いながら…

必死で一馬の心を……


抱きしめた。




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