桜風 〜春の雪〜

ガラガラ


なかなか入ってこない客人に……

不思議に思ったその人は…


ゆっくりと扉を開けた……。



次第に取り払われてゆく

白く塗られた扉……


目の前に立った一人の

女性……


年はうちのお母さんよりも少し上かな……


スラッとした長身に

優しい目元


聞かなくてもわかる

春雪の……お母さん


「あ…あの……私、春雪君と……同じクラスの…!!」


緊張でガチガチのぎこちない挨拶に


「はじめまして。春雪の母です。クスクス」


その人はにこやかにあたしを部屋へと導いてくれた。



今の顔………

春雪に…

そっくりだなぁ……。



そう思うだけで……

あたしの枯れ果てた

心に……

一滴の優しい雫が

しみわたってくる……






春…雪………


春雪………




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