桜風 〜春の雪〜
季節は毎日

少しずつ歩みを進めて……


あたしの心の醜さだけを
置き去りにして……



新学期を迎えてから

約1ヵ月が過ぎようとしていた。


あっと言う間に、散り始めた桜の花は、とても儚くて

あたしは、この季節になるといつも得体の知れない寂しさに襲われていた……。



あたしは顔に似合わず人見知りのせいか……

相変わらず

馴染めないクラスの雰囲気と……

アユミへの罪悪感に苛まれながら

なんとも、陰気な高校生活を送っていた。




そう言えば……

心なしか……

あんなに仲のよかったアユミとの会話も弾まなくなって……

時折アユミが何ともいえない寂しい表情をするのを

目の端で感じるようになっていた。





「花梨、 花梨…?」


あ…

ほらまた………

隣の森定くんの席に座りながら

半分意識を飛ばしかけてる
あたしに話しかけるアユミ……

あたしは残った半分の意識でも―――

彼女の曇り顔を見逃すことはなかった。


「久しぶりに、帰りにサンセット寄って行こうよ!」


アユミは森定くんの机に両肘をついて

上目遣いであたしに切りだした。


アユミ…

やっぱり綺麗だなぁ〜

あたしが男なら絶対好きになる。


「ねぇ、聞いてんのー?
サンセット、サンセット、サンセットォー!!」


アユミがあまりにもサンセットを連呼するから

つい吹き出してしまったあたしに、

アユミは穏やかな笑顔で
「話したいことも…
あるしさ。」



って笑いかけた。




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