桜風 〜春の雪〜

「いってきまーす!」

何時もより何倍も元気な挨拶で家を飛び出す。


歩いて5分程のバス停まで、少し時間を気にしながら早歩き……


バス停に着くと

そこには…

見慣れた……

細い影―――


「アユミ!!??」


あたしは…

走ってその影に近づいた。


今日、梅雨明けしたばかりの空は―――

昨日降った雨が、嘘みたいに

ジリジリとあたし達に、太陽の容赦ない視線が照りつけられていた。



例の一件以来……

あたしを完全無視していたアユミと…

バス停で会うのは、久しぶり……


以前は…朝、余裕があるときはこのバス停から、二人で登校してたんだ。


「アユミ……。」


「オッハヨ〜!!」


あたしの姿に気づいたアユミは…

前と変わらず…

いつものように


右手を挙げて大きく手を振る

これって…夢?

ほっぺをギュッと抓ると…
当然のごとく、痛みが頬に走った。


「あゆみぃ〜!!」



勢いよく抱きついたあたしを…


アユミは…

細い手で……

何度も背中をポンポンって…


しながら、

"ごめんね"


って…抱きしめてくれた。






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