桜風 〜春の雪〜

「お婆ちゃん…あたしのこと…覚えてる??」


お婆ちゃんは何も言わずに、にっこりと笑いかけてくれた



ずっと…会いたいと思ってた

あの日のお婆ちゃん。


「あたしね…あの話を聞いて……この学校に決めたの…。」



「良いことは…あったかな?」


穏やかな、お婆ちゃん独特の空気が、あたしを和ませる…


「うん。あたし…この学校に来て、良かったよ。」



即答したあたしに…

お婆ちゃんは…

少し悲しみの混じった笑顔で答える……



「花梨さん……。」



「え……?お婆ちゃん…?あたしの…名前…」


驚きを隠せない、あたしの顔を

切なげに見つめながら、お婆ちゃんは節目がちに言った…。


「やっぱり…そうだったんだね……。」




あたしの名前…知ってるの?



前にも…こんなことがあった………

そう…

春雪のお母さんに名前を呼ばれたあの時……



あたしの…運命を導いた…


一本の糸が……


頭の中で…

ゆっくりと手繰り寄せられ……

つながってゆく………。



「もしかして…春雪の…お婆ちゃん……?」






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