桜風 〜春の雪〜
話ってなんだろう…



ふと頭をよぎる不安に、あたしはどうしても受け入れられずにいる……


あたしの中にある


汚い感情に身震いを起こした。



あそこは、あたしたちにとって……

他の友達に聞かれたくない密かな

秘密をうちあける場所だから…。


もしかしたら――

あたしの秘密が…

バレてしまったのかもしてない――。


そんな事ばかりが頭をよぎるのは

きっと…

あたしの心が荒んでいるせいだ……。


嫌だ。

汚い自分…

大嫌いな自分


こんな後ろめたさをずっと感じていくならば……


イッソノコトジブンカラ…


取り留めなく頭を支配してくる真っ黒な渦に、

あたしは何度も支配されそうになりながら…


それもまた、自分本位な考えだと

自覚しては……自らの心に不信感を募らせてゆく……


気がつくと、5・6限はあっと言う間に終わっていて


ホームルームも後は挨拶を残すだけになっていた。





結局何の解決にも至らなかった……

あたしは、机に肘を向いたまま、ただ空を眺めていた。


クラスメイトに軽く手を振りながら

近付いてくるアユミが

霞んで見える……


ドキン…

再び激しく動き始めたあたしの心臓は

体中に緊急事態を発しているみたいだ。


嫌だ。

アユミは大事な友達なのに………


アユミを失うかもしれない…

それだけであたしの体は
恐怖を制御出来なくなっているんだ。


完全に恐怖に飲み込まれたあたしの頭は


指一本動かす指令さえ出せないまま……

魂が抜けたみたい……


あたしの体は、教室の床へと吸い込まれるように

……堕ちていった。


あたしの目に微かに映る斜めの世界



とっさに手を差し伸べたアユミの細い右手と……

見慣れた無愛想な顔が

見えたような気がしたけど…



あたしは手を伸ばすことも出来ないまま


ただ堕ちていった。






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