桜風 〜春の雪〜

………


あたし達の間の深い沈黙…


その間も…風に吹かれて
木の葉は…一枚ずつ…

葉を落とし………

冬への準備を続けている……。



その姿が………

何故か……とても嬉しそうに見えるんだ。

きっと……

お婆ちゃんに会えたのが嬉しいんだね……。


葉がすべて落ちたら、また花を咲かせるんだ…。

きっと、そうやって永遠にこの木は、約束を守り続ける…


「花梨さん…ごめんなさいね……。私は…あなたに…辛い運命を……
背負わせてしまったね………。」



静かに語り出した、お婆ちゃんは………


とても…小さくて……

風に吹かれて…飛んでいってしまいそうだった……


実はね……


春雪も……お婆ちゃんの話を聞いて……


この高校に決めたんだって…



不思議だよね……

一つの思い出が……

あたし達を………



ここへ導いたんだ……


そして…

桜の舞う…入学式……



春雪は…この場所で…


桜を見上げる……


あたしに…

初めて、会ったんだって……。


まるで………


遙か昔の………


約束が…叶ったみたいに…




声を詰まらせながら…


すべてを語る…

お婆ちゃんは……


過去を見つめながら……

涙を流した………。




.
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