桜風 〜春の雪〜

長かった授業がやっと終わって……

みんなが帰路へとつく頃


あたしは…

一人……

教室に残っていた……。


今日…一日中考えた…。

お婆ちゃんのこと……


お婆ちゃんのお通夜は、今日…森定家で行われる。


春雪が書いてくれた地図は…

あたしの手の中で

何度も握りしめられて…

グチャグチャになっていたけど…


何度も…穴が開くほど…
見返した、その地図は…
もう…頭の中に完全にインプットされている。

今まで、知らなかったんだけど…………


春雪の家は、小さな宝石屋さんをやっているんだって……


お婆ちゃんの旦那さん…

つまり、春雪のお爺ちゃんから代々続く…家業で…

家には小さな加工場もあって、昔はそこで遊んでよく怒られたんだって……




この期に及んで

まだ迷いを捨てきれずにいるあたしに…


今朝のアユミの言葉が蘇る…




あたしは…


意を決して、お婆ちゃんの見送りへと……出かけることにした。




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