桜風 〜春の雪〜

幾つもの古い家が建ち並ぶ道から……

細い路地を入っていくと……


提灯で灯されたお婆ちゃんの家は、直ぐに見つけることができた。


一歩中に足を踏み入れると……


様々なお婆ちゃんの思い出が……聞こえてくる。


あたしは…辺りを見回して一馬の姿を探した。


一馬はちょうど、

お婆ちゃんに最後の別れを言っているところだ…

それに続くように

お婆ちゃんの祭壇へと

向かうあたしを…

不思議そうな目で

見つめる春雪の…お母さん………


あたしはご家族に一礼すると…

お婆ちゃんの亡骸に

目を落とした………



初めて見る……

人の亡骸……


お婆ちゃんは………

とても…安らかな顔をして

眠っていた。


隣に置かれた二枚の写真……


一枚は先に亡くなったお爺ちゃんらしき人と、小さな赤ちゃんを抱く夫婦を囲む家族写真…


きっと、この赤ちゃんは…春雪だね…


もう一枚は………


まだ若い頃のお婆ちゃんと…

軍服に身を包んだ青年の写真…



どちらのお婆ちゃんも…
幸せそうに

笑っていた………。




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