桜風 〜春の雪〜
……

「花梨…あたし知ってるから…。」



モウアタシタチ……

トモダチジャナイ…


トモダチジャナイ……



「行かないで!」


あたしは

ちぎれるんじゃないかって位―――

手を伸ばしたけれど…

アユミの細い右手はもう
何処にも無くて……

あたしの手は虚しく宙を切った。



……??

あれ?


何も掴めなかったはずの手に暖かい感覚を感じる…。


そっか…

あたし夢見てたんだ。


「アユミ…!!」


夢から覚めた体を、あたしは強引に押し上げた。


頭がクラクラする…。


視界はユラユラとグラツきながら…


しだいに……

色を確かめるように戻ってゆく―――。


ツンと鼻につくアルコールの匂い

真っ白な仕切りのカーテン

あたしの右手には――


確かに温かい感触があった。


「な、なんで!?」




いつものように無愛想な顔をして

そっぽを向いている――――


森定くんがいたんだ………。


誰にも気づかれずに、あたしの運命が動き出した瞬間……


どんな結末が、待っているかなんて……

誰にもわからない、短くて長い運命の始まりだった……。




.
< 14 / 204 >

この作品をシェア

pagetop