桜風 〜春の雪〜
‡桜の木の下で…‡
満月の優しい光が……


一本の木を

照らし出す………。


その木に語りかけるように…


寄り添う……


……一つの影………



ざわめきを帯びた

風が………


あたし達を包んだ……。




「……花梨……?」


彼の発する

戸惑いの混じった声に


あたしは……

次第に高鳴る鼓動を感じながら……

彼の元へ…歩んでゆく……。





やっと……

会えた。


お婆ちゃん……

何十年も昔……

お婆ちゃんが…愛する人と交わした約束……



あたしは…

運命に導かれて………


もう一度……

愛する人と…


この場所で……

出会うことができたよ。



それに応えるように…


あたし達の間に

風が吹いた………


パラパラと舞い落ちる

木の葉は…

淡いピンクの

花びらに姿を変えて

あたし達を包み込んだ………。




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