桜風 〜春の雪〜

「…春雪…。やっと…会えたね………。」


「花梨……。」


春雪は…あたしの大好きな

優しい顔で…

あたしを見つめていた……。




「お婆ちゃん……春雪と、出会わせてくれて…ありがとう。」


あたしは春雪の隣に並び
桜の木に話しかけた……。



春雪は…その光景を

ただじっと…見つめている…


「ねぇ…春雪…運命って…信じる?」


「運…命…?」

きょとんとした顔であたしを見つめる春雪


「あたしは…信じるよ。お婆ちゃんが…春雪と出会う…運命をくれたの。」



「…そうだな………。」


春雪は一言だけ言って

太い幹に

愛おしそうに触れた……。




あたしも…

自然と、そこに……

手を重ねる………


春雪の手の温もり………

この木に詰まった

たくさんの温もり……



あたし達は…

それを感じながら…





初めてのキスをした……





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