桜風 〜春の雪〜
「な、な、な……」


余りの衝撃に

あたしは、驚きの言葉を口にしようとしたけれど――

その声は

言葉にならずに……

シンと静まり返った空気に

吸い込まれていった。


ただ、ギュッと握りしめられている

手と手のつなぎ目に

なにも考えられなくなって…

じっと目を落とすあたしに気づいたのか

森定君は……


静かにその手を離した。


あ、あれ?


もしかして―――

「もしかして…照れてる??」



あたしの視界の隅に少しだけ見えた彼の顔が……
尋常じゃなく赤くなってることに気づいてしまったあたしは………

さっきまで話し方を忘れてしまっていた

この口で…




彼に対して

初めて言葉を発した――――。





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