桜風 〜春の雪〜
‡ 希望の花 ‡
春雪の家を訪れるのは…
二度目。


一度目は…お婆ちゃんとのお別れのため……


そして…二度目の今は…

春雪とのお別れのため…


辺りは、帰り支度をする近所の人や……

中学の同級生らしき人

高校のクラスメイトの嘆き声で埋め尽くされていた……



たくさんの人の中から…――


あたしの姿を見つけた春雪のお母さんが……


何度も何度も周りに頭を下げながら…

こちらへ向かってくるのが見えた……


「…今日は、来てくれてありがとう。」


か細い声を出しながら頭を下げる

お母さんは……


前見たときよりも、一回り小さくなっているように感じる……



「…連絡が遅くなってしまって…ごめんなさいね…。」


頭を上げたお母さんは……

たくさんの涙を目に溜めていた……。


春雪の前では、涙を見せなかったお母さん。


今では………

心の糸が……プツリと切れてしまったように……


悲しみの涙で埋もれていた……。




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