桜風 〜春の雪〜
眠ったままの愛しい人は……


呼びかけに答えるはずもなく


沢山の花に囲まれて……

消えることのない、笑みを浮かべていた……。



「春雪……。」


あたしは…もう一度彼の名を呼んだ…。


これが……


春雪の生身の体に呼びかける最後になる……。



あたしは……手に握りしめていた


小さな枯れ葉を……

彼の動かない手のひらに閉じ込めた……。




あたし達の……運命の木の欠片……。



あたし達に美しい幻を見せてくれた


落ち葉。


本当は綺麗な花びらを贈りたかったけど…


あたしは……

落ち葉も大好きなんだ。



だって……。


新たな始まりのシンボルだと思うから…。



きっと……


またあの場所で会えるよね?


だから……

さよならは言わない。



春雪……

またいつか………。




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