桜風 〜春の雪〜

「花梨ちゃん…。
何もしてあげられなかったなんて…思わなくていいの。あなたは、最期まで…春雪の生きる希望だったんだから……。」


お母さんが、涙で濡れた瞳を細めて言った…。


あたしが…生きる希望?

春雪も………

希望を最期まで捨ててなかった


それが…何よりも


嬉しいことだった。





「お母さん…あたし…約束したんです。
幸せになるって…
彼が、幸せをつかむ強さを……教えてくれたから……。春雪を産んでくれて…ありがとうございました。」


あたしは………

春雪とおんなじ目をした

お母さんに約束を誓った……。



お母さんは……

涙で腫れ上がった瞳で、眩しそうに月を見つめながら……


春雪に話しかけているように見えた。




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